SNMP監視とは?仕組みやメリット・デメリット、ツールの選び方を解説

ネットワーク機器やサーバーなどの監視にネットワークの標準プロトコル「SNMP」を活用することで、CPU使用率やメモリ使用率、ネットワークトラフィックの状況などを監視することができます。

本記事では、SNMP監視の仕組みやメリット・デメリット、ツールの選び方について詳しく解説します。

SNMP監視とは

SNMP監視とは、SNMPというプロトコルを使ってネットワーク機器やサーバーから情報を収集し、異常を検知する監視手法です。SNMPは、Simple Network Management Protocolの略で、ネットワーク経由で監視・管理するためのプロトコルを指します。SNMP監視は、監視対象機器に組み込まれたSNMPエージェントが、管理サーバーからのリクエストに応じて情報を提供する仕組みです。

SNMP監視は、ネットワークの安定性とパフォーマンスを維持するために、多くの企業や組織で利用されています。

ネットワーク運用監視における重要性

SNMP監視はネットワークデバイスのCPU使用率やメモリの状態、トラフィック量など、さまざまなパラメータを監視するため、問題が発生する前に予防措置を講じることができます。SNMPは多くのネットワーク機器に標準で搭載されているため、特別なハードウェアを追加することなく導入することが可能です。

SNMP監視で実現できること

SNMP監視を実施することで、ネットワーク機器やサーバーの状態をリアルタイムで把握できるため、トラブルを早期発見でき、迅速に対応することができます。また。SNMP監視で得られたデータを活用することで、ネットワークのパフォーマンスを最適化し、ダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。さらに、SNMPは多くのネットワーク機器で標準サポートされているため、特定のベンダーに依存せずに監視を行うことができます。

SNMP監視の主な監視手法

SNMP監視の主な監視手法は以下の2つです。

  •  ・機器に状態を要求する「ポーリング監視」
  •  ・異常を自発的に通知する「トラップ監視」

それぞれの監視手法について詳しく解説します。

機器に状態を要求する「ポーリング監視」

「ポーリング監視」とは、ネットワーク機器やサーバーの状態を定期的に取得する方法です。具体的には、監視システムが対象機器に対して定期的に状態を問い合わせることで、機器の動作状況を把握します。この方法の利点は、監視者が必要な情報を能動的に取得できる点です。例えば、CPU使用率やメモリの空き容量など、必要なデータを定期的に収集することで、問題が発生する前に異常を検知しやすくなります。

 

しかし、「ポーリング監視」にはいくつかの課題もあります。第一に、監視対象が多い場合、ネットワークに負荷がかかる可能性があることです。「もしかしたら、ネットワークが遅くなるのでは?」と心配する方もいるでしょう。さらに、ポーリングの頻度が高すぎると、監視システム自体のパフォーマンスに影響を与えることも考えられます。

 

これらの問題を解決するためには、適切なポーリング間隔を設定することが重要です。例えば、重要度の高い機器には短い間隔を設定し、そうでない機器には長めの間隔を設定するなど、状況に応じた柔軟な対応が求められます。ポーリング監視は、ネットワークの状態を定期的に把握し、異常を早期に発見するための有効な手段です。

異常を自発的に通知する「トラップ監視」

トラップ監視は、ネットワーク機器が異常を検知した際に自発的に通知を送信する仕組みです。これにより、監視システムはリアルタイムで問題を把握でき、迅速な対応が可能になります。たとえば、ルーターやスイッチが異常を検知すると、SNMPトラップを管理サーバーに送信し、管理者にアラートを発します。「いつの間にかネットワークがダウンしていた…」といった状況を未然に防ぐことができるのです。

 

トラップ監視のメリットは、異常検知の即時性にあります。ポーリング監視と異なり、定期的な状態確認を待たずに通知が行われるため、問題の早期発見が可能です。しかし、トラップが送信されない場合もあるため、ポーリング監視との併用が推奨されます。これにより、監視の信頼性を高めることができます。

 

また、トラップ監視の設定には、SNMPトラップの受信を許可するための設定が必要です。管理サーバー側で適切なポートを開放し、トラップを受信できるようにします。さらに、トラップの内容を理解するためには、MIB(管理情報ベース)が必要です。MIBは、トラップの種類や内容を解釈するための情報を提供します。

 

トラップ監視は、異常をリアルタイムで検知し、迅速な対応を可能にする重要な監視手法です。

SNMP監視とping監視の違い

SNMP監視とping監視の違いは以下の3つです。

  •  ・取得できる情報量と監視レベル
  •  ・ネットワーク負荷と処理速度
  •  ・設定手順と導入ハードル

それぞれの違いについて詳しく解説します。

取得できる情報量と監視レベル

SNMP監視とping監視の1つ目の違いは、取得できる情報量と監視レベルです。

ping監視は、ICMPプロトコルを利用し、機器が応答するかどうかを確認する手法を指します。取得できる情報は非常に限られており、機器の状態の詳細な情報を得ることはできません。



 

一方、SNMP監視は、ネットワーク機器の詳細な状態を把握するための手法を指します。SNMPは、ネットワーク管理システムと機器間で情報をやり取りするためのプロトコルで、より高度な監視が可能です。SNMPを使用すると、CPU使用率やメモリ使用量、インターフェースの状態など、機器の内部情報を細かく取得できます。

ping監視は死活確認に適しており、SNMP監視は詳細な情報を取得してネットワーク全体の健康状態を把握するのに適しています。複雑なネットワーク環境や多くの機器を管理する必要がある場合には、SNMP監視が効果的です。

ネットワーク負荷と処理速度

SNMP監視とping監視の2つ目の違いは、ネットワーク負荷と処理速度です。

ping監視は、ICMPプロトコルを使ってネットワークデバイスの応答を確認する手法を指します。通信量が少なく、ネットワークにかかる負荷が非常に軽いのが特徴です。そのため、多数のデバイスを同時に監視しても、ネットワークのパフォーマンスに悪影響を与えることはほとんどありません。

一方、SNMP監視はネットワーク機器から詳細な情報を収集するため、ネットワークにかかる負荷が増加する可能性があります。大規模なネットワーク環境では、SNMPのポーリング頻度やデータ量を適切に設定しないと、ネットワークの処理速度に影響を与えるかもしれません。

このような問題を回避するためには、ネットワークの規模や監視対象の重要度に応じて、適切な監視間隔やデータ収集量を設定することが重要です。

設定手順と導入ハードル

SNMP監視とping監視の3つ目の違いは、設定手順と導入ハードルです。

ping監視は、pingコマンドを使用してIPアドレスを指定し、その応答時間を確認することで死活監視を行います。ネットワーク機器が正常に応答するかどうかを確認するだけなので、比較的簡単に導入することが可能です。設定自体はシンプルで、特別なソフトウェアやハードウェアを必要としません。

一方、SNMP監視は、監視対象の機器にSNMPエージェントをインストールし、SNMPマネージャーと連携させる必要があります。さらに、MIB(管理情報ベース)を使用して監視項目を定義し、適切なOID(オブジェクト識別子)を設定します。CPU使用率やメモリ使用量など、詳細なリソース情報を取得できますが、導入には専門知識が必要です。

SNMP監視を支える重要コンポーネント

情報を構造化して管理する「MIB」

MIB(Management Information Base)は、SNMP監視の基盤を支える重要なコンポーネントです。管理対象のネットワーク機器やサービスの情報を構造化して管理するためのデータベースのような役割を果たします。MIB自体はネットワーク管理者が直接操作することは少なく、SNMPツールが自動的に利用します。MIBは標準化されたオブジェクト名や値を使用するため、異なるベンダーの機器間でも一貫した監視が可能です。

個別のデータ位置を特定する「OID」

OID(Object Identifier)は、SNMP監視において個別のデータ位置を特定するための重要な要素です。OIDは、ネットワーク機器やその構成要素が持つ情報を取得するための識別子として機能します。例えば、CPUの使用率やメモリの空き容量など、特定のデータを取得する際に必要な情報を指し示す役割を果たします。

OIDは階層構造を持ち、ツリー状に展開されるため、特定の情報にアクセスする際に非常に効率的です。この階層構造は、国際標準化機構(ISO)や国際電気通信連合(ITU)によって管理されており、各機器メーカーが自社製品に適したOIDを設計することで、多様なデバイスに対応できるようになっています。

SNMP監視を導入するメリット

SNMP監視を導入するメリットは以下の3つです。

  •  ・障害の早期検知と迅速な復旧
  •  ・ベンダーを問わず監視できる汎用性の高さ
  •  ・標準搭載が多く初期コストを抑えやすい

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

障害の早期検知と迅速な復旧

SNMP監視を導入する1つ目のメリットは、障害の早期検知と迅速な復旧です。

SNMP監視では、異常が検知されると即座にアラートが発信されます。このアラートはメールやSMS、専用の管理コンソールなどを通じて担当者に通知されるため、迅速な対応が可能です。さらに、SNMP監視はCPUやメモリの使用率が異常に高くなるなどの兆候を監視し、事前に対策を講じることで障害の発生を未然に防ぐことができます。

ベンダーを問わず監視できる汎用性の高さ

SNMP監視を導入する2つ目のメリットは、ベンダーを問わず監視できる汎用性の高さです。

SNMP(Simple Network Management Protocol)は、ネットワーク機器の監視と管理を行うための標準プロトコルとして広く採用されています。このため、異なるメーカーの機器が混在する環境でも、SNMPで監視を行うことが可能です。

ルーターやスイッチ、サーバー、プリンターなど、さまざまな機器がSNMPに対応しているため、特定のベンダーに依存せず、自由に機器を選定できます。また、SNMPは多くの監視ツールに標準でサポートされているため、導入も比較的容易です。

標準搭載が多く初期コストを抑えやすい

SNMP監視を導入する3つ目のメリットは、標準搭載が多く初期コストを抑えやすいことです。

ルーターやスイッチなど、多くのネットワーク機器には、最初からSNMP機能が組み込まれています。既存のインフラを大幅に変更することなく、スムーズにSNMP監視を開始することが可能です。さらに、標準搭載されている機能を活用することで、ベンダーに依存せずに独自の監視システムを構築することもできます。

SNMP監視を導入するデメリット

SNMP監視を導入するデメリットは以下の2つです。

  •  ・UDP通信によるパケットロスのリスク
  •  ・大規模ネットワークでのパフォーマンス低下

それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

UDP通信によるパケットロスのリスク

SNMP監視を導入する1つ目のデメリットは、UDP通信によるパケットロスのリスクです。

UDP(ユーザーデータグラムプロトコル)は、軽量で高速な通信を実現するために設計されていますが、その代わりに通信の信頼性を保証しません。つまり、データが途中で失われても再送信されないため、ネットワークの混雑や不安定な環境下ではパケットロスが発生しやすくなるわけです。

このリスクを軽減するためには、通信経路の帯域幅を確保し、ネットワーク機器の設定を見直すネットワーク環境の最適化が求められます。また、SNMP監視を行う際には、重要な通知を二重化するなど、冗長性を持たせることでパケットロスの影響を最小限に抑えることが可能です。さらに、SNMPv3を使用することで、セキュリティを強化し、通信の信頼性を向上させることができます。

大規模ネットワークでのパフォーマンス低下

SNMP監視を導入する2つ目のデメリットは、大規模ネットワークでのパフォーマンス低下です。

SNMPがネットワーク機器から情報を収集する際に大量のデータを発生させ、それがネットワーク全体の通信量を増加させるため、大規模ネットワークではパフォーマンスが低下する場合があります。

また、SNMPはUDPという通信プロトコルを使用するため、信頼性が低く、パケットロスが発生しやすいという特徴があります。これにより、データの一部が失われる可能性があり、特に大規模なネットワークではその影響が顕著に現れることがあります。さらに、SNMPの設定や管理が複雑になることも、大規模ネットワークでのパフォーマンス低下の一因です。

このような問題を解決するためには、ネットワークのトポロジーを最適化し、適切な監視間隔を設定する必要があります。また、SNMPのトラフィックを監視し、必要に応じて監視範囲を限定するなどの対策を講じることで、パフォーマンスの低下を最小限に抑えることが可能です。

SNMPのバージョンと機能の違い

初期仕様である「SNMPv1」

SNMPv1は、ネットワーク監視のための初期仕様として1988年に登場した、SNMPの最も古いバージョンです。

古い機器や小規模ネットワークで容易に導入でき、基本的な監視には十分な機能を備えているものの、認証や暗号化が十分でないため、データが第三者に傍受されるリスクがあります。このため、現代のセキュリティ要件を満たすために、後継のバージョンであるSNMPv2cやSNMPv3へのアップグレードが推奨されています。

それでもなお、SNMPv1はそのシンプルさと互換性の高さから、古いネットワーク機器を多く抱える環境やセキュリティリスクが低い内部ネットワークでの使用など、特定の環境では今でも利用されています。

データ取得を効率化した「SNMPv2c」

SNMPv2cは、SNMPv1の後継として登場し、データ取得を効率化するためにいくつかの改良が施されています。SNMPv2cでは「コミュニティストリング」による簡易的なアクセス制御を採用しており、SNMPv1との互換性を保ちながら、効率的なデータ取得を行うことが可能です。

また、SNMPv2cでは「GETBULKリクエスト」という新たな機能が追加されました。複数のデータを一度に取得できるため、大規模なネットワークを監視する際にはネットワークの監視効率が大幅に向上します。さらに、SNMPv2cはSNMPv1に比べてエラーハンドリングが改善され、エラーが発生した際の対応がスムーズになり、監視精度が向上しました。

暗号化と認証に対応した「SNMPv3」

SNMPv3は、SNMPのバージョンのうち、暗号化と認証に対応した最も安全なバージョンです。ネットワーク管理者は、データの機密性を保ちつつ、信頼性の高い監視を実現することができます。

SNMPv3の最大の特徴は、通信データを暗号化することで不正アクセスを防ぐことができる点です。また、ユーザー認証機能により、正当なユーザーのみがアクセスできるようにすることで、セキュリティをさらに強化しています。

SNMP監視の主要な監視項目と設定

CPUやメモリのリソース状態監視

CPU使用率やメモリ使用量が高い状態が続くと、システムの応答が遅くなり、最悪の場合、システムダウンを引き起こす可能性があります。SNMPでは、MIB(管理情報ベース)と呼ばれるデータベースを通じて、CPUやメモリの情報を取得することが可能です。

MIBはネットワーク機器の状態を階層構造で表現し、OID(オブジェクト識別子)を使って特定のデータにアクセスします。詳細なリソース情報を効率的に収集し、監視ツールで表示することが可能です。

ネットワークのトラフィック量

トラフィック量の増加は、ネットワークの遅延や障害の原因となることがあるため、適切な監視が必要です。SNMPを利用することで、インターフェースごとの送受信パケット数やバイト数を監視し、これらのデータをもとにトラフィックの増減をリアルタイムで把握できます。

設定方法としては、まず監視対象の機器にSNMPエージェントを設定し、トラフィックに関連するMIB(管理情報ベース)を参照します。MIBはネットワーク機器の情報を構造化して管理するためのデータベースで、トラフィック量に関する情報も含まれています。OID(オブジェクト識別子)を用いて、特定のトラフィックデータを取得することが可能です。

機器のハードウェア状態とログ監視

ネットワーク機器の正常な動作を確保するためには、CPUやメモリの使用率、ディスクの空き容量、電源の状態、ファンの回転数など、ハードウェアの状態を定期的にチェックし、異常を早期に検知することが欠かせません。

また、ログにはシステムの動作履歴やエラー情報が記録されており、これを分析することで問題の原因を特定しやすくなります。定期的にログを確認し、異常が発生した際にはすぐに対応することで、ネットワークの安定性を保つことが可能です。

SNMP監視ツールの選び方

Zabbixなどの無料オープンソースツール

Zabbixなどのオープンソースツールは、コストを抑えつつ高機能なSNMP監視を実現するための優れた選択肢です。

Zabbixはネットワーク機器やサーバーの状態をリアルタイムで監視できる強力なツールで、オープンソースコミュニティによって継続的に開発・改善されており、多くの企業や組織で利用されています。

Zabbixの魅力はその柔軟性です。多様なデータソースから情報を収集し、グラフやアラートを通じて視覚的に管理できます。さらに、拡張性が高く、プラグインやスクリプトを追加することで、特定のニーズに合わせたカスタマイズも可能です。中小規模のネットワーク環境での導入がしやすく、初期コストを抑えることができます。

ただし、Zabbixを効果的に利用するためには、ある程度の技術的知識が必要です。初めての方は、オンラインのドキュメントやコミュニティフォーラムを活用することで、設定方法やトラブルシューティングのノウハウを学ぶことができます。

導入が容易な商用パッケージソフト

商用パッケージソフトは、SNMP監視の導入を容易にする選択肢のひとつです。商用パッケージソフトは、初めてSNMP監視を導入する企業や専門的な知識がない場合でもスムーズに運用開始できるように設計されています。

商用パッケージソフトの大きな利点は、インストールから設定までのプロセスが簡単であることです。また、商用パッケージソフトはサポート体制が整っていることが多く、トラブルが発生した際にも迅速に対応してもらえます。

一方で、商用パッケージソフトは初期費用やライセンス費用が発生するため、予算とのバランスを考慮する必要があります。しかし、導入の手軽さやサポートの充実度を考慮すると、費用対効果は高いといえるでしょう。

自社のネットワーク規模に合った選定基準

SNMP監視ツールを選ぶ際には、ネットワークの規模を正確に把握することが重要です。

小規模なネットワークでは、無料のオープンソースツールがコストを抑えつつも十分な機能を提供します。例えば、Zabbixは多くのユーザーに支持されており、初期投資を抑えたい方に魅力的な選択肢と言えるでしょう。一方、中規模から大規模なネットワークでは、商用パッケージソフトが適しています。サポート体制が充実しており、トラブル時に迅速な対応が可能です。

まとめ

今回は、SNMP監視の仕組みやメリット・デメリット、ツールの選び方について解説しました。

SNMP監視は、ネットワークの標準プロトコル「SNMP」を活用した監視手法です。SNMP監視を実施することで、ネットワークの状態を効率的に把握でき、障害の早期発見や迅速な対応が可能となります。

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