オブザーバビリティとは?監視との違いや導入するメリット、ツール選びのポイントを解説

オブザーバビリティとは、システムの内部状態を外部から観測し、状態を把握する能力です。
オブザーバビリティを高めることで、システムを安定して稼働させ、ユーザーの満足度を向上させることができます。

本記事では、オブザーバビリティの概要や監視との違い、導入するメリット、ツール選びのポイントについて詳しく解説します。

オブザーバビリティとは

オブザーバビリティとは、システムの内部状態を外部から観測し、状態を把握する能力です。「観測する」を意味するオブザーブ(Observe)と「能力」を意味するアビリティ(Ability)を組み合わせた造語で、可観測性と呼ばれることもあります。

IT運用管理においては、メトリクスやログ、トレース、イベントなどのデータをもとに、システム内部の状態を把握し、問題の発見や解決を迅速に行う手法として活用されています。

複雑なシステム環境において、システムの健全性を維持するためにはオブザーバビリティが欠かせません。

オブザーバビリティが注目されているのは、システムの複雑化や変化のスピードが増しているからです。従来の監視手法では、システムの全体像を把握することが難しく、迅速な対応が求められる現在のIT環境では限界があります。

マイクロサービスアーキテクチャの普及により、システムはより多くのコンポーネントから構成されるようになりました。個々のコンポーネントの状態を把握するだけでは不十分で、システム全体の動きを把握する必要があるわけです。

オブザーバビリティは、システム全体を俯瞰し、潜在的な問題を未然に防ぐための手段として重要性を増しています。

監視との違い

オブザーバビリティと監視の主な違いは、システムの状態を理解する深さと広がりです。

監視は、サーバーのCPU使用率やメモリ消費量を定期的にチェックし、予め設定した閾値を超えた際にアラートを出すことで、異常を通知することに重点を置いています。
一方、オブザーバビリティの目的は、メトリクスやログ、トレースといったデータを活用することでシステムの内部状態をより詳細に把握し、問題の原因を迅速に特定することです。予期せぬ障害にも対応でき、システムの健全性を高めることができます。

オブザーバビリティが必要とされる理由

オブザーバビリティが必要とされる理由は以下の2つです。

  •  ・マイクロサービスやクラウド化による複雑化
  •  ・従来の運用では対応できない予期せぬ障害の増加

それぞれの理由について詳しく解説します。

マイクロサービスアーキテクチャやクラウド化による複雑化

オブザーバビリティが必要とされる1つ目の理由は、マイクロサービスアーキテクチャやクラウド化による複雑化です。

マイクロサービスアーキテクチャとは、アプリケーションを小さな独立したサービスに分割する設計手法を指します。開発の柔軟性が増す一方で、システム全体の複雑性が増加する点がデメリットです。
また、インフラの管理を外部クラウドに委ねることで、スケーラビリティやコスト効率を向上できますが、従来の監視手法では対応が難しく、システムの全体像を把握することが困難になっています。

オブザーバビリティを活用することで、複雑化したシステムでも問題の特定や解決が容易になり、迅速な障害対応が可能です。

従来の運用では対応できない予期せぬ障害の増加

オブザーバビリティが必要とされる2つ目の理由は、従来の運用では対応できない予期せぬ障害の増加です。

近年、ITシステムは複雑化し、従来の監視方法だけでは予期せぬ障害を迅速に特定し、解決することが難しくなっています。システムが多くのコンポーネントで構成され、相互に影響を与え合う環境では、障害の原因を特定することは容易ではありません。

オブザーバビリティを導入することで、複雑なシステム内での異常を素早く発見し、予期せぬ障害の原因を迅速に特定することが可能です。

オブザーバビリティを支える3つの柱

メトリクス:数値で捉えるシステムの状態

メトリクスとは、CPU使用率やメモリ消費量、ネットワークの遅延時間など、システムのパフォーマンスを示すデータを指します。メトリクスを定期的に収集し、分析することで、システムの状態を数値で把握することが可能です。

メトリクスの収集は、システムの安定運用に欠かせません。たとえば、Webサービスを提供する企業では、ユーザーアクセス数やレスポンスタイムをメトリクスとして監視し、サービスの品質を維持しています。

また、メトリクスは、問題の予兆を早期に発見するためにも活用されます。異常値を検知することで、障害が発生する前に対策を講じることができ、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。

ログ:根本原因の特定に役立つ記録

ログとは、操作履歴や通信履歴、エラーといった、システムやアプリケーションが動作する際に生成されるデータです。ログを収集・分析することで、どの部分で問題が発生したのか、どのような影響があったのかを迅速に把握することができます。

また、ログはシステムのパフォーマンスや利用状況を把握するための情報源としても利用され、将来的な問題の予防や、システムの最適化に役立てることが可能です。

トレース:処理の流れを可視化する出発点

トレースとは、どのような経路でデータが流れ、どの部分で遅延や問題が発生しているのかを特定する作業です。システム内での処理の流れが可視化され、システム全体の健全性を把握することができます。

トレースは、マイクロサービスアーキテクチャのように複雑なシステムにおいて、高い効果を発揮することが可能です。マイクロサービスアーキテクチャでは多くのサービスが連携して一つの機能を提供しますが、その際にどのサービスがどのように連携しているのかを理解するのは容易ではありません。

トレースを利用することで、各サービス間の呼び出しやデータの流れを視覚的に捉えられるため、問題の根本原因を迅速に特定できます。

+1の要素「イベント」の重要性

イベントとは、ユーザーのログインやデータベースのクエリ実行、APIの呼び出しなど、システム内で発生する特定の出来事やアクションの記録を指します。

数値データであるメトリクスや記録としてのログと異なり、イベントは「何が」「いつ」「どこで」起こったのかを具体的に把握できるため、イベントを収集・分析することで、システム全体の流れやユーザーの行動を追跡し、異常の兆候を早期に察知することが可能です。

また、特定のイベントが発生した際に即座に通知を受け取ることで、迅速な対応が可能になり、システムの信頼性を向上させ、ユーザー体験の向上にも寄与します。

オブザーバビリティを導入するメリット

オブザーバビリティを導入するメリットは以下の4つです。

  •  ・サービスの信頼性と顧客体験の向上
  •  ・開発・運用チーム間の連携強化
  •  ・根本原因の特定
  •  ・オペレーショナル・エクセレンスの実現

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

サービスの信頼性と顧客体験の向上

オブザーバビリティを導入する1つ目のメリットは、サービスの信頼性と顧客体験の向上です。

システムの状態をリアルタイムで把握し、予期せぬ障害を即座に検知・対応することで、サービスの信頼性を向上させることができます。たとえば、システムが停止してサービスを提供できなくなった場合でも、迅速に原因を特定し復旧できるため、顧客に与える影響を最小限に抑えることができるわけです。

また、システムのパフォーマンスを常に最適化できるため、ユーザーは快適な操作感を得られます。顧客満足度が高まり、リピート率の向上や口コミによる新規顧客の獲得にもつながるでしょう。さらに、信頼性の高いサービスを提供することで、ブランド価値が向上し、競争力を強化できます。

開発・運用チーム間の連携強化

オブザーバビリティを導入する2つ目のメリットは、開発・運用チーム間の連携強化です。

開発チームと運用チームが異なるツールやデータを使用すると、問題の原因を特定する際に混乱が生じる恐れがあります。

オブザーバビリティを導入すると、開発チームと運用チームが統一されたプラットフォーム上でリアルタイムにデータを共有できるため、同じデータをもとにシステムの状態を把握でき、問題を迅速に特定・解決することが可能です。

また、統一されたデータに基づく分析により、開発と運用の両チームが共通の目標に向かって協力しやすくなり、システムの信頼性を向上させるだけでなく、新機能のリリースや問題解決のスピードも向上します。

根本原因の特定

オブザーバビリティを導入する3つ目のメリットは、根本原因の特定です。

オブザーバビリティでは、システムのメトリクスやログ、トレースといったデータを統合的に分析することで、問題の根本原因を迅速に特定することができます。また、オブザーバビリティを活用することで、問題の発生を予測したり故障を未然に防止することも可能です。

オペレーショナル・エクセレンスの実現

オブザーバビリティを導入する4つ目のメリットは、オペレーショナル・エクセレンスの実現です。

オペレーショナル・エクセレンスとは、企業の運営において効率性や効果性を最大化し、顧客満足度を高めることを指します。オブザーバビリティを導入することで、システムやプロセスの透明性が向上し、問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、運用上の課題を未然に防ぎ、業務の効率化が実現できるわけです。

オブザーバビリティツールとは

オブザーバビリティツールとは、システムのパフォーマンスデータやログ、トレース情報などを収集・分析・可視化することで、問題の早期発見や根本原因の特定を支援するツールです。

従来の監視ツールが主にシステムの稼働状況を監視するのに対し、オブザーバビリティツールはシステム全体の状態を把握し、異常の兆候を事前に察知することができます。

たとえば、システムの負荷が急激に増加した際に、どの部分がボトルネックになっているのかを特定でき、迅速に対応することができるわけです。

オブザーバビリティツール選びのポイント

オブザーバビリティツール選びのポイントは以下の4つです。

  •  ・対応するテレメトリーデータの範囲
  •  ・Open Telemetryへの対応
  •  ・料金体系とスケーラビリティ
  •  ・自動分析機能の有無

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

対応するテレメトリーデータの範囲

オブザーバビリティツール選びの1つ目のポイントは、対応するテレメトリーデータの範囲です。

テレメトリーデータとは、システムの状態や動作を把握するために収集されるデータで、主にメトリクス、ログ、トレース、イベントの4つに分類されます。テレメトリーデータは、システムの異常を早期に検知し、問題の根本原因を特定するために欠かせません。

オブザーバビリティツールを選ぶ際には、これらすべてのテレメトリーデータに対応しているかを確認することが重要です。

Open Telemetryへの対応

オブザーバビリティツール選びの2つ目のポイントは、Open Telemetryへの対応です。

Open Telemetryとは、オブザーバビリティを実現するためのオープンソースフレームワークを指します。Open Telemetryではメトリクスやログ、トレースといったテレメトリーデータを一元的に扱うことが可能です。異なるシステムの状況を統合的に把握することができ、システムのパフォーマンスや障害の原因を迅速に特定することができます。

また、Open Telemetryはオープンソースプロジェクトであるため、コミュニティによる継続的な改善が期待でき、新しい技術やニーズに柔軟に対応できるのも大きなメリットです。

料金体系とスケーラビリティ

オブザーバビリティツール選びの3つ目のポイントは、料金体系とスケーラビリティです。

多くのツールはサブスクリプション型の料金体系を導入しており、利用する機能やデータ量に応じて月額料金が変動するため、自社のニーズに合ったプランを選ぶようにしましょう。

また、スケーラビリティも見逃せないポイントです。企業の成長に伴い、システムの規模やデータ量が増加することが予想されます。企業の成長に柔軟に対応できるツールを選ぶことで、将来的な追加コストを抑えることが可能です。

AI・自動分析機能の有無

オブザーバビリティツール選びの4つ目のポイントは、自動分析機能の有無です。

自動分析機能がないツールでは、データ解析に手間がかかり、問題の発見や解決が遅れることも考えられます。一方、自動分析機能を備えたツールは、膨大なデータを迅速かつ正確に解析し、問題の予測や異常検知を自動的に行うため、問題解決の時間を短縮し、運用効率を向上させることが可能です。

まとめ

今回は、オブザーバビリティの概要や監視との違い、導入するメリット、ツール選びのポイントについて解説しました。

オブザーバビリティは、システム内部の状態を正確に把握し、問題を迅速に特定する仕組みです。オブザーバビリティを導入することで、システムの信頼性を向上させ、顧客満足度を高めることができます。

本記事で解説したオブザーバビリティと監視の違いやメリット、ツール選びのポイントを参考に、より安定したシステム環境の構築に取り組んでみましょう。

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