バックアップ管理とは?必要とされる理由や管理手法、世代管理の考え方を解説

データの損失が企業活動に与える影響を抑えるためには、適切なバックアップ管理が欠かせません。
バックアップデータを保管するだけでなく、バックアップの頻度や手法、保管場所、保管期間などを適切に管理することが重要です。

本記事では、バックアップ管理の概要や必要とされる理由、管理手法、世代管理の考え方について詳しく解説します。

バックアップ管理とは

バックアップ管理とは、バックアップデータの作成から保管、復元、廃棄に至るまでのプロセスを管理することです。

デジタル化が進む現代において、データは企業の資産であり、データ損失は業務停止や信頼失墜につながるリスクがあります。

情報資産を守るためには、ただバックアップデータを作成するだけでなく、バックアップデータをどこに、どのような方法で保管するか、いつまで保管するか、不要になったバックアップデータをいつ廃棄するのかなどを計画的に管理することが重要です。

バックアップ管理を適切に行うことで、機器の故障や自然災害、サイバー攻撃などによってデータが消失・破損した際に迅速に復元することができ、影響を最小限に抑えることができます。

バックアップとリストアの違い

バックアップとは、データが失われたり破損したりした場合に備えて、データのコピーを作成・保存しておくことです。一方、リストアは、バックアップからデータを復元するプロセスを指します。

バックアップがデータのコピーの作成・保存であるのに対し、リストアはバックアップデータを元のデータに戻すことなので、リストアするためには事前にバックアップをしておく必要があるということです。

バックアップ管理が必要とされる理由

バックアップ管理が必要とされる理由は以下の4つです。

  •  ・ランサムウェアなどサイバー攻撃への備え
  •  ・自然災害やハードウェア障害によるデータ消失リスク
  •  ・人的ミスによるデータ損失への対応
  •  ・事業継続計画(BCP)における重要性

それぞれの理由について詳しく解説します。

ランサムウェアなどサイバー攻撃への備え

バックアップ管理が必要とされる1つ目の理由は、ランサムウェアなどサイバー攻撃への備えです。

近年では、規模に関わらずさまざまな企業がサイバー攻撃の標的となっています。バックアップを適切に管理することで、サイバー攻撃を受けた際にデータを迅速に復旧でき、業務の停止時間を最小限に抑えることが可能です。

たとえば、感染したデータを暗号化し、復旧のために身代金を要求するランサムウェアに感染した場合でも、データを定期的にコピーし、安全な場所に保管することで暗号化されたデータを復旧できるため、被害を最小限に抑えることができます。

また、バックアップデータそのものを保護するためには、バックアップデータを変更不可にするイミュータブル(不変)バックアップが効果的です。適切に設定されたイミュータブルバックアップであれば、攻撃者がバックアップにアクセスした場合でも、保持期間中のデータの改ざんや削除を防ぐことができます。

自然災害やハードウェア障害によるデータ消失リスク

バックアップ管理が必要とされる2つ目の理由は、自然災害やハードウェア障害によるデータ消失リスクです。

地震や台風といった自然災害は予期せぬタイミングで発生するため、オフィスやデータセンターに甚大な被害をもたらし、重要なデータが失われる可能性があります。また、ハードディスクドライブやサーバーが故障すると、データにアクセスできなくなるかもしれません。

このようなリスクに対処するためには、定期的なバックアップの実施が不可欠です。バックアップを行うことで、データ消失のリスクを最小限に抑え、事業の継続性を確保できます。

人的ミスによるデータ損失への対応

バックアップ管理が必要とされる3つ目の理由は、人的ミスによるデータ損失への対応です。

データの誤削除や上書き、誤操作といった人的ミスは、どれだけ注意していても発生する可能性があります。人的ミスによるデータ損失に備えるためには、定期的なバックアップが不可欠です。データを定期的にバックアップすることで、万が一のミスが起きた際にも、データを復旧することができます。また、日次バックアップを行うことで、1日の作業内容を丸ごと保存し、ミスが発生した場合でも前日の状態に戻すことが可能です。

事業継続計画(BCP)における重要性

バックアップ管理が必要とされる4つ目の理由は、事業継続計画(BCP)における重要性です。

事業の継続性を確保するためには、バックアップの信頼性を確保することが不可欠です。バックアップ管理を適切に行うことで、企業が災害や事故などの突発的な事態に直面した場合でも、迅速かつ効率的に業務を再開することができます。

また、バックアップデータを安全な場所に保管することも、災害時のリスク分散に効果的です。たとえば、地震などの自然災害でオフィスが倒壊し、データにアクセスできなくなった場合でも、遠隔地にデータを保管しておくことで、迅速に事業を再開することができます。

バックアップの種類

システムバックアップ

システムバックアップとは、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェア、設定ファイル、システムレジストリ情報などを含め、コンピュータシステム全体を丸ごと複製して保存することです。

システムバックアップにより、システムのクラッシュや障害が発生した場合でも、迅速に復旧することができます。システムバックアップの方法としては、システム全体をハードディスクや外部ストレージに保存し、システムを完全な状態で復元できるイメージバックアップが一般的です。
システムが停止すると業務に大きな影響を与えるため、システムバックアップは欠かせないものとなっています。

システムバックアップが重視される理由は、システム全体の稼働状態を維持できるからです。たとえば、システムの変更やアップデートが原因で問題が発生した場合、バックアップから復旧することで、以前の正常な状態に戻すことができます。また、システムの再インストールや再設定の手間を省くことができ、復旧にかかる時間とコストを削減することが可能です。

データバックアップ

データバックアップとは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどに保存されているデータを、別のメディアにコピーすることです。

デジタルデータは、ランサムウェア攻撃やハードウェアの故障、人的ミスなど、さまざまなリスクにさらされています。こうしたリスクに備えるためには、定期的なデータバックアップが欠かせません。

データバックアップでは、ファイルやフォルダ、データベースなど、さまざまな形式のデータが対象となります。バックアップを行う際には、データの種類や重要度に応じて適切な方法を選択することが重要です。たとえば、重要な顧客情報や財務データは、特に注意深くバックアップする必要があります。

データバックアップの保存先には、クラウドストレージや外部ハードディスク、ネットワークストレージなど、さまざまな選択肢があります。クラウドストレージはインターネットを通じてデータを保存する方法で、物理的な災害からデータを守ることが可能です。

一方、外部ハードディスクは手軽に利用できるため、小規模なデータバックアップに向いています。これらの手段を適切に組み合わせることで、データの安全性を高めることができるでしょう。

論理バックアップ

論理バックアップとは、データベースシステムにおいて、データベースのテーブルやビュー、インデックスなどの情報を含めた、データの論理的な構造をそのまま保存する手法です。

論理バックアップは、特定のテーブル単位での復元やデータ移行を行いたい場合に適しています。論理バックアップでは、データベースの内容をテキストファイルとして出力し、必要に応じてそのテキストファイルを用いてデータをリストア(復元)することが可能です。

論理バックアップの利点として、異なるデータベースシステム間でのデータ移行が容易であることが挙げられます。異なるデータベースシステム間で移行する場合は、データ型や構文の互換性を確認し、必要に応じて変換することが重要です。

物理バックアップ

物理バックアップとは、データを保存している物理ディスク全体を丸ごとコピーする方法です。

物理バックアップにより、データだけでなくファイルシステムやブート情報など、ディスク全体の状態をそのまま保存できます。

物理バックアップの利点は、ディスク全体をそのまま保存するため、復旧時に細かい設定や環境を再構築する手間が省けることです。たとえば、サーバーが故障しても、物理バックアップを行っていれば、元の状態をそのまま復元できます。

一方、物理バックアップのデメリットは、ディスク全体をコピーするため、保存に必要な容量が大きくなり、バックアップ時間が長くなることです。このため、物理バックアップを行う際には、保存先の容量やバックアップにかかる時間を考慮する必要があります。

代表的なバックアップ手法

代表的なバックアップ手法は以下の3つです。

  •  ・フルバックアップ
  •  ・差分バックアップ
  •  ・増分バックアップ

それぞれの特徴について詳しく解説します。

フルバックアップ

フルバックアップとは、データ全体を一度にバックアップする方法です。フルバックアップにより、システムやデータの完全なコピーを取得することができます。

フルバックアップのメリットは、復旧が迅速かつ簡単である点です。全てのデータがひとつのバックアップに集約されているため、データを失った場合でも、迅速に元の状態に戻すことができます。

一方、データ量が多い場合、バックアップにかかる時間とストレージ容量が大きくなる点がフルバックアップの課題です。頻繁にフルバックアップを実施すると非効率になる可能性があるため、フルバックアップは定期的に行い、差分バックアップや増分バックアップと組み合わせて運用するようにしましょう。

差分バックアップ

差分バックアップは、前回のフルバックアップ以降に変更されたデータのみを保存する手法です。

毎日更新されるデータベースや日々の業務で使われるファイルサーバーなど、データの変更が頻繁に行われる環境では差分バックアップが適しています。

差分バックアップ手法のメリットは、フルバックアップと最新の差分バックアップだけで復旧できるため、復旧時に必要なデータが少なくて済む点です。ただし、差分データが膨大になると、バックアップの速度が低下する可能性があります。

増分バックアップ

増分バックアップは、前回のバックアップ以降に変更されたデータのみを保存する方法です。

最初にフルバックアップを実施し、その後は定期的に増分バックアップを行うだけなので、ストレージの使用量を最小限に抑えることができます。データを復元する際には、最初のフルバックアップとその後のすべての増分バックアップが必要です。

バックアップにおける世代管理の考え方

データを複数の世代に分けて保存することで、任意の時点にデータを復元することができます。

世代管理が重要とされる理由は、データの変化や更新が頻繁に行われる現代のビジネス環境において、最新のバックアップだけではなく、過去の状態も保持することで、データの整合性や復元性を高めることができるからです。

3世代管理(祖父・父・子)の基本ルール

3世代管理とは、最新のバックアップを「子」、その前のバックアップを「父」、さらにその前のバックアップを「祖父」として管理することです。3世代管理により、最新のデータだけでなく、過去のデータも復元することができます。

バックアップの保存先と運用方法

ローカルバックアップによる高速復旧

ローカルバックアップとは、データを企業内のサーバーや外付けハードディスクに直接保存する手法を指します。

ローカルバックアップの利点は、ネットワークを介さずにデータを転送するため、保存速度・復旧速度が非常に速いことです。また、ネットワーク障害が発生した場合でも、保存されたバックアップから迅速にデータを取り出すことができます。

ただし、ローカルバックアップはバックアップデータが同じ場所にあるため、火災や洪水などの物理的な災害に対して弱い点が課題です。

クラウドバックアップで実現する遠隔保管

クラウドバックアップは、バックアップデータをインターネットを介して外部のサーバーに保存する方法です。地理的に離れた場所にデータを保存できるため、災害や盗難などのリスクを軽減できます。

クラウドバックアップの利点は、データの可用性と復旧の迅速さです。クラウドバックアップを利用すれば、どこからでも元の状態に復旧することができます。

ただし、クラウドバックアップを利用する際には、データ転送速度やサービスの信頼性、コストなどを考慮することが重要です。大容量データを頻繁にバックアップする場合、膨大な通信コストが必要になる可能性があります。

3-2-1ルールに基づく保管先の分散

3-2-1ルールとは、元のデータを含めて合計3つのデータを保持し、2種類の異なるメディアに保存し、そのうち1つを遠隔地に保管する方法です。

3つのバックアップデータを作成することで、いずれかのバックアップデータが破損した場合でも、他のバックアップデータから復元することができます。また、異なるメディアに保存することで、ハードウェアの故障やメディアの劣化によるリスクを抑えることが可能です。さらに、1つを遠隔地に保管することで、火災や地震といった災害によるデータ消失のリスクを回避できます。

バックアップ運用設計のポイント

RPO・RTOによる取得頻度の逆算

RPOは「データをどの時点まで復旧する必要があるか」を示し、RTOは「システムをどれだけの時間で復旧させるか」を指します。RPO・RTOを設定することで、データの取得頻度を逆算し、最適なバックアップスケジュールを組むことができます。

たとえば、RPOが1時間の場合、データ損失を最小限にするために1時間ごとにバックアップを取る必要があります。一方、RTOが2時間であれば、システムが停止してから2時間以内に復旧できるよう、バックアップの保存先や復旧手順を整備することが重要です。

取得時間帯の最適化

業務時間中にデータのバックアップを行うと、システムの負荷が増し、業務に支障をきたす可能性があります。そのため、バックアップの取得は、業務時間外やシステムの利用が少ない時間帯に設定するのが理想的です。

定期的なリストアテストによる信頼性確保

定期的なリストアテストを実施することで、バックアップが正常に行われているかだけでなく、実際にデータを復元できるかも確認することが可能です。リストアテストの頻度は、業務の重要度やデータの更新頻度に応じて設定します。

リストアテストの際には、実際の復旧手順をシミュレーションし、問題が発生した場合に備えて改善策を講じることも大切です。

まとめ

今回は、バックアップ管理の概要や必要とされる理由、管理手法、世代管理の考え方について解説しました。

企業のデータを安全に保管し、万が一の事態に迅速に対応できるようにするためには、バックアップ管理が必要です。適切なバックアップ管理を行うことで、データの損失リスクを最小限に抑え、業務の継続性を確保することができます。

本記事で解説したバックアップ管理の手法や世代管理の考え方を参考に、効果的な管理体制を構築しましょう。

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