可用性とは?信頼性・耐障害性との違いや可用性向上のポイントを解説

可用性は、情報セキュリティの3要素のひとつであり、必要なときにシステムを利用できる状態を維持していることです。
可用性が低下すると、売上機会を損失したり、ブランドイメージが低下したりする恐れがあります。

本記事では、可用性の概要や信頼性・耐障害性との違い、可用性向上のポイントについて詳しく解説します。

情報セキュリティにおける可用性(Availability)とは

情報セキュリティにおける可用性(Availability)とは、システムやデータが必要なときに利用できる状態であることです。可用性を確保することで、業務の継続性を保ち、顧客満足度を向上させることができます。

可用性が重要とされるのは、現代のビジネスにおいて情報システムが欠かせない存在だからです。システムがダウンすると、企業にとって大きな損失をもたらす可能性があり、顧客の信頼を失うリスクも伴います。

たとえば、オンラインバンキングサービスではシステム障害が発生すると顧客が取引を行えなくなるため、安定したシステムの構築が必要です。

可用性が求められる具体的なシーン

可用性が求められる具体的なシーンとして、オンラインショップや金融機関のWebサイトが挙げられます。

たとえば、オンラインショップのサイトがダウンしていると、顧客がサイトにアクセスできず、売上機会を逃してしまうわけです。また、金融機関のサイトがダウンすると、ユーザーが取引を行えず、信用を失うリスクがあります。

さらに、医療機関のシステムも高い可用性が必要です。電子カルテや診療予約システムが使用不能になると、診療が滞り、患者の安全に影響を及ぼすかもしれません。

製造業では、生産ラインのシステムが停止すると、製品の生産に直接的な支障をきたし、納期遅延や品質低下のリスクが高まります。

可用性管理とは

可用性管理とは、システムやサービスが利用者に対して常に利用可能な状態を維持するための一連の管理活動を指します。システムの稼働時間を最大化し、障害やダウンタイムを最小限に抑えることが、可用性管理の目的です。

可用性管理の手法としては、システムの冗長化やバックアップ体制の整備、監視ツールによるリアルタイムの監視などがあります。これらの手法を組み合わせることで、システムの可用性を高めることが可能です。

サービス継続性との違い

可用性とサービス継続性は、システムやサービスの信頼性を高めるために重要な概念ですが、それぞれ異なる側面を持っています。

可用性とは、システムやサービスが利用者に対してどれだけ安定して提供され続けるかを示す指標です。具体的には、システムがダウンせずに稼働し続ける時間の割合を指します。「このシステム、いつも動いているかな?」と不安に思うことがないようにするのが可用性の役割です。

一方、サービス継続性は、災害や障害が発生した際に、サービスをどのようにして早期に復旧させ、継続するかを計画・実行することを指します。つまり、予期せぬ事態が発生したときにどのように対応し、サービスを中断させないかを考えるのがサービス継続性の目的です。「もし何か起こったら、どうやってサービスを続けるのか?」という疑問に答えるのがこの概念です。

可用性は通常時の安定稼働を重視し、サービス継続性は異常時の対応策を重視します。この違いを理解することで、システム設計や運用において適切な対策を講じることが可能です。

信頼性との違い

可用性と信頼性はどちらも情報セキュリティにおいて重要な概念ですが、それぞれ異なる側面を持っています。

可用性は、システムやサービスが必要なときに利用可能であるかを示す指標です。一方、信頼性はシステムが正確に機能し続ける能力を意味します。

つまり、可用性が高いシステムはユーザーがいつでもアクセスできますが、信頼性が低ければ、たとえアクセスできても正しく利用できない可能性があるわけです。

可用性と信頼性はどちらもシステムの健全性を保つために欠かせない要素ですが、それぞれの役割と重要性を理解し、適切な対策を講じることが求められます。

耐障害性との違い

可用性とは、ユーザーが必要なときにシステムやサービスを利用できる状態を維持することを指します。たとえば、24時間365日アクセス可能なオンラインショッピングサイトは、可用性の高いシステムと言えるわけです。

一方、耐障害性は、システムの一部に障害が発生しても、全体として動作を継続できる能力を示す指標です。

耐障害性の高いシステムは、ハードウェアの故障やソフトウェアのバグが発生しても、サービスを継続的に提供できるよう設計されています。たとえば、データセンターにおける冗長化された電源供給やデータのバックアップ体制が、耐障害性を高めるための施策です。

このように、可用性はシステムの利用可能時間を最大化することに焦点を当てており、耐障害性は障害発生時の影響を最小限に抑えることに重きを置いています。両者を適切に理解し、システム設計に反映することで、より強固で信頼性の高いシステムを構築することが可能です。

可用性に関連する情報セキュリティ用語

情報セキュリティの3要素・7要素とは

情報セキュリティの3要素とは、機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)の3つの要素です。それぞれの頭文字を取って、「CIA」と呼ばれることもあります。

情報セキュリティの7要素とは、上記の情報セキュリティの3要素に、真正性、責任追跡性、否認防止、信頼性の4つの要素が追加されたものです。

真正性は情報が本物であることを証明できる性質で、責任追跡性は誰が、いつ、どのように情報にアクセスしたかを追跡できることを指します。否認防止は、送信者や受信者が後でその行為を否定できないようにする仕組みで、信頼性はシステムが安定して稼働できる能力です。

機密性(Confidentiality)とは

機密性とは、情報が許可された人だけにアクセスできる状態を維持することを指します。

機密性を確保することで、情報の漏えいや不正アクセスを防ぎ、安全性を確保することが可能です。

機密性を確保するためには、暗号化やアクセス制限が欠かせません。暗号化は、情報を特定の鍵を持つ人だけが解読できる形に変換する技術です。万が一情報が第三者に渡っても内容を理解されるリスクを減らせます。また、アクセス制限では、許可された人だけが情報にアクセスできるように設定します。

完全性(Integrity)とは

完全性とは、情報が正確で変更されていない状態で維持されていることを指します。

完全性を確保することで、データが不正に改ざんされたり、誤って変更されたりするリスクを抑えることが可能です。

アクセスログの取得やデジタル署名の活用、バックアップ体制の構築、アクセス制限などにより、完全性を確保することができます。

可用性の指標となる稼働率の計算方法

稼働率の基本的な算出式

稼働率は、以下の計算式で算出されます。

 稼働率(%) = 実稼働時間 ÷ ( 実稼働時間 + 停止時間 ) × 100

たとえば、あるシステムが1週間(168時間)で160時間稼働し、8時間停止した場合、
稼働率は「160 ÷ (160 + 8) ×100= 95.2」つまり95.2%となります。

算出した稼働率をもとに、システムの信頼性を向上させるための対策を検討することができます。

MTBF・MTTRを用いた評価方法

ITシステムやサーバーなどの信頼性を評価する場合は、MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修復時間)を用いて稼働率を算出する場合もあります。MTBFは稼働開始から故障するまでの平均時間を指し、MTTRは故障から復旧までにかかる平均時間を指します。

計算式は以下の通りです。

 稼働率(%) = MTBF ÷ ( MTBF + MTTR ) × 100

たとえば、MTBFが100時間、MTTRが2時間の場合、稼働率は約98%となります。

予防保全や予知保全を強化することでMTBFを延ばし、迅速な復旧体制の構築でMTTRを短縮することで、可用性を向上させることができます。

ファイブナイン(99.999%)が示す水準

ファイブナインとは、システムの稼働率が99.999%であり、非常に高い可用性を意味します。具体的には、年間のダウンタイムが約5分15秒程度に抑えられる水準です。

この水準を達成するためには、冗長化やバックアップ体制の強化、そして障害を予測し迅速に対応するための監視システムの導入など、システムの設計や運用において多くの工夫と技術が必要とされます。

ファイブナイン以外にも、稼働率を示す標準として、シックスナイン(99.9999%)やフォーナイン(99.99%)、スリーナイン(99.9%)などがあります。それぞれの稼働率におけるダウンタイムの許容時間は以下の通りです。

  •  ・シックスナイン(99.9999%):ダウンタイムの許容時間 年間約31秒
  •  ・フォーナイン(99.99%):ダウンタイムの許容時間 年間約52分36秒
  •  ・スリーナイン(99.9%):ダウンタイムの許容時間 年間約8時間46分

可用性が低下することで生じるリスク

可用性が低下することで生じるリスクは以下の2つです。

  •  ・売上機会の損失と収益への影響
  •  ・顧客離れとブランドイメージの毀損

それぞれのリスクについて詳しく解説します。

売上機会の損失と収益への影響

可用性が低下することで生じる1つ目のリスクは、売上機会の損失と収益への影響です。

可用性が低下すると、企業は売上機会を失い、収益に大きな影響を受ける可能性があります。たとえば、オンラインストアがダウンした場合、顧客は商品を購入することができず、機会損失が発生する恐れがあるわけです。
また、サービスが利用できない状態が続くと、顧客の信頼を失い、長期的には売上減少につながることも考えられます。

この問題を解決するためには、サーバーの冗長化やネットワークの強化、定期的なメンテナンスを行い、障害発生を未然に防ぐことが重要です。さらに、システム障害に迅速に対応できる体制を整えることで、顧客への影響を最小限に抑えることができます。

顧客離れとブランドイメージの毀損

可用性が低下することで生じる2つ目のリスクは、顧客離れとブランドイメージの毀損です。

システムやサービスが頻繁にダウンすると、顧客に不信感が生じ、他のサービスへと流れてしまう恐れがあります。このような状況が続けば、売上が減少するだけでなく、ブランドイメージが大きく損なわれるかもしれません。

ブランドイメージの毀損は、単に売上の問題にとどまりません。長期的には、企業の信頼性そのものに影響を与え、新規顧客の獲得が難しくなる恐れがあります。SNSや口コミサイトが発達している現代では、一度のトラブルが瞬時に拡散され、イメージダウンに繋がることもあるでしょう。

システム設計で押さえるべき可用性向上のポイント

可用性向上のポイントは以下の5つです。

  •  ・サーバー・ネットワーク機器の冗長化
  •  ・バックアップ体制の整備
  •  ・クラウドサービスや可用性ゾーンの活用
  •  ・SLA(サービスレベル合意)の締結
  •  ・監視ツールによる障害の早期検知

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

サーバー・ネットワーク機器の冗長化

可用性向上の1つ目のポイントは、サーバー・ネットワーク機器の冗長化です。

冗長化とは、同じ機能を持つ複数の機器を用意し、一方が故障してももう一方がその役割を代行できるようにすることを指します。データセンターでのサーバーのクラスタリングやネットワーク機器の二重化によって、冗長化を実現することが可能です。

クラスタリングとは、複数のサーバーを一つのシステムとして動作させる技術で、一台が故障しても他のサーバーがその役割を引き継ぎます。ネットワーク機器の二重化では、ルーターやスイッチなどを複数設置し、一つが故障しても通信が途絶えないようにするわけです。

このような冗長化の取り組みによって、ダウンタイムが大幅に減少し、システムの可用性を向上させることができます。

バックアップ体制の整備

可用性向上の2つ目のポイントは、バックアップ体制の整備です。

バックアップとは、データを別の場所に複製して保存することを指します。システム障害やデータ消失といった予期せぬ事態が発生した際にも、迅速に復旧することが可能です。

バックアップ体制の整備では、バックアップの頻度を決めることが欠かせません。業種や業務内容によって異なりますが、一般的には毎日、少なくとも週に一度はバックアップを取ることが推奨されます。

また、バックアップデータを保存する場所も考慮すべきです。オンサイト(同じ施設内)での保存だけでなく、オフサイト(別の施設やクラウド)にも複製を置くことで、火災や地震などの災害時にもデータを守ることができます。

さらに、実際にバックアップからデータを復元できるかを確認することも重要です。バックアップデータが正常に復元できるか定期的にテストを行うことで、いざというときにデータが使えないという事態を防ぐことができます。

クラウドサービスや可用性ゾーンの活用

可用性向上の3つ目のポイントは、クラウドサービスや可用性ゾーンの活用です。

クラウドサービスは、自社で物理的なサーバーを持たずに必要なリソースをインターネット経由で利用できる仕組みです。システムのスケーラビリティが向上し、障害時にも迅速に対応できます。

可用性ゾーンとは、クラウドサービスのリージョン内に設けられた、独立性を持つ1つ以上のデータセンター群です。複数のゾーンにシステムを分散して構成することで、一つのゾーンで障害が発生した場合にも、他のゾーンでサービスを継続できるように設計できます。

たとえば、AWSの可用性ゾーンでは、各ゾーンが独立して電源や冷却設備、ネットワークを持ち、他のゾーンと物理的に隔離されています。

SLA(サービスレベル合意)の締結

可用性向上の4つ目のポイントは、SLA(サービスレベル合意)の締結です。

SLAとは、サービス提供者と利用者の間で交わされる合意で、提供されるサービスの品質や可用性を明確に定めた文書を指します。SLAの締結により、システムがどの程度の稼働率を維持するべきか、障害が発生した場合の対応時間や手順が具体的に規定されます。また、障害が発生した際の対応時間(MTTR)や予防的なメンテナンスの計画、定期的なレビューの実施についても記載されることが一般的です。

SLAを作成する際には、提供するサービスの範囲を確認し、どの程度の可用性が求められるのかを明確にすることが欠かせません。
たとえば、24時間365日稼働が求められるシステムでは、非常に高い可用性が必要とされるわけです。

監視ツールによる障害の早期検知

可用性向上の5つ目のポイントは、監視ツールによる障害の早期検知です。

監視ツールは、サーバーのCPU使用率やメモリ使用量、ネットワークトラフィックなどを監視し、設定した閾値を超えた場合に通知を行います。早期に障害を検知することができ、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。また、ログを分析することで、障害の原因を特定し、再発防止策を講じることができます。

監視ツールを導入する際は、システムの規模や特性に応じた適切なツールを選定するようにしましょう。

まとめ

今回は、可用性の概要や信頼性・耐障害性との違い、可用性向上のポイントについて解説しました。

可用性は、システム設計において非常に重要な要素です。システムを常に利用可能な状態に維持することで、業務の効率化や顧客満足度の向上が期待できます。

本記事で解説した可用性向上のポイントを参考に、より効果的なシステム改善に取り組んでみましょう。

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